住まいづくりを始めた方に向けて、在来工法(ざいらいこうほう)のメリットデメリットを紹介します。
この記事を読めば、住まいづくりに必要な在来工法の知識は、ひと通りマスターできるようになっています。
ぜひ参考にしてみてください。
▼この記事を書いた人▼
僕は大手ハウスメーカーの現役社員です(9年目)。
今回は在来工法と2×4工法の違いや、ハウスメーカー選びのポイントなども分かりやすく解説しますね。
在来工法(軸組工法)とは
在来工法は日本に古くからある建築方法です。「軸組工法」と呼ばれることもあります。
日本の家のおよそ7~8割は在来工法で建てられていて、現在もハウスメーカーや工務店では主流の工法です。
大手ハウスメーカーのなかには「○○構法」といった独自の名前がついているケースもあります。
しかし、ベースとなっているのは、あくまで在来工法か2×4工法のどちらかです。
在来工法は“線”で家を支える!!
分かりやすく言えば、在来工法は【線】で建物を支える工法です。
柱・梁・筋交いの3つをタテヨコナナメに組み合わせていきます。
- 基礎に土台をのせて柱を立てる(タテ)
- 梁(はり)を水平に渡して骨組みの完成(ヨコ)
- 筋交いを壁に入れて補強(ナナメ)
木材をタテヨコナナメに組み合わせて建てるのが“在来工法”と分かれば、それで十分です!!
※動画で見ると、分かりやすいかも↓
在来工法は和風デザインになる?
在来工法は古くからある伝統的な工法で、工務店でも今なお主流となっています。
そのため、在来工法=和風住宅をイメージする人も多いですが、外観デザインと工法は関係がないのでご安心を。
在来工法でも洋風住宅にできるし、スタイリッシュな外観にもできます。
在来工法のメリット4つ
①間取りの自由度が高い
在来工法の1番のメリットは、間取りの自由度が高いこと。
柱・梁・筋交いをそれぞれ動かすことで、耐震性を保ちながら、好みの間取りにすることができます。
一方の2×4工法は、構造体である壁を取り払ってしまうと家の強度がガクッと落ちてしまうため、自由度は低めです。
②大きな窓をつくりやすい
在来工法の場合、大きな窓を設置して、開放的な室内空間を作れます。
2×4工法などのパネル工法は壁をくり抜けないので、大きな窓もとりにくいです。
③建築コストが安い
2×4工法などに比べて、在来工法のほうが建築コストも安いケースが多いです。
具体例として
- 大手ハウスメーカーはモノコック構造や2×6工法が多い
- ローコストメーカーや工務店は在来工法が多い
といった傾向があります。
また、大手ハウスメーカーのなかには、商品ごとに在来工法と2×6工法が分かれているところも多く、
- 2×6工法:価格高い(性能重視)
- 在来工法:価格安い(コスト重視)
といった棲み分けになっています。
このあたりは、後ほどハウスメーカー紹介で詳しく解説しますね。
④カビや結露がつきにくい
2×4工法に比べて、在来工法は構造上のスキマが多く、通気性も高いのが特徴です。
そのため、カビや結露が発生しにくいというメリットがあります。
カビや結露は目に見えないところに発生するので、メリットとしては実感しづらいかもしれませんが…。
※スキマが多い=気密性が低いとも言えるので、住み心地は2×4工法などのほうが優れているというのが通説です。
在来工法のデメリット3つ
①品質にバラつきが出やすい
在来工法の最大のデメリットは、大工さんの技術によって仕上がりにバラつきが出ること。
規格化されている2×4工法とは違い、在来工法は現場で大工さんが作業する工程も多いからです。
ボルトの留め方ひとつで耐震性も変わり、断熱材のつめ方ひとつで断熱性も大きく変化するのが注文住宅。
現場作業の多い在来工法は、大工さんの当たりハズレに影響されやすいということは知っておきましょう。
ハウスメーカーに入社して9年間、数多くの現場を見てきましたが…大工さんのレベルは本当にバラバラですよ。
②施工期間が長い
2×4工法に比べて、在来工法は工期も長くなりやすい特徴があります。
理由は先ほどのデメリットと同様、規格化されておらず、大工さんの現場作業が多いからです。
工期が長いということは、仮住まいの費用なども余分にかかるということは知っておきましょう。
③耐震性もやや劣る
面で支える2×4工法などに比べて、線で支える在来工法は耐震性もやや劣ります。
実例として、熊本地震においては同じ【耐震等級2】でも、以下のような差が見られました。
- モノコック構造:被害小
- 2×4工法:被害小
- シンプルな在来工法:被害大
壁全体で地震エネルギーを受け止める2×4工法とは違い、在来工法は柱と梁の接合部などに力が加わると、そのモロさを露呈します。
在来工法のハウスメーカーや工務店を選ぶ場合は、
- 制震フレーム搭載
- 耐震等級3
などのフィルターをかけてから、メーカーを絞っていくのがおすすめです。
在来工法はこんな人におすすめ
あくまで2×4工法(2×6工法)と比較した場合ですが、在来工法は以下のような人におすすめです。
- 理想の間取りやこだわりがある人
- 大きな窓をつけて、開放的なリビングにしたい
- リフォームや増改築の余地も残しておきたい
2×4工法ではできない間取りも、在来工法ならできるというケースはたくさんあります。
理想の間取りや、具体的な間取りイメージがある人は、在来工法のハウスメーカーから検討してみるのが良いと思いますよ。
2×4工法と、どっちがおすすめ?迷ったときの判断基準
在来工法とツーバイフォー工法、どっちが良いんだろう?
上記のように迷っている人も多いかと思います。
それもそのはずで、現在は2×4や2×6がメインのハウスメーカーも結構ありますからね…。
2×4工法は“面”で家を支える
2×4工法や2×6工法は面で支える工法です。
在来工法のように柱・梁・筋交いを組み合わせるのではなく、柱と壁が一体化したパネルを組み立てていきます。
イメージ的には、段ボールを組み立てていくイメージ。
ちなみに「2×4」は、2インチ×4インチの角材を使用しているという意味。
性能や品質重視ならツーバイ系
住み心地や仕上がりを重視するなら、在来工法よりもツーバイ系のほうがおすすめです。
価格は高くなる傾向にありますが、ツーバイ系のほうが
- 気密性
- 耐火性
- 耐風性
なども優れています。
規格化されているため、現場でのヒューマンエラーも少ないのも嬉しいポイント。
耐火性が高いので、火災保険が安くなるなどのメリットも受けられます。
関連記事:2×4工法のメリットと欠点をプロが解説
間取りの自由度を重視するなら「在来工法」
注文住宅らしい自由な設計ができるのは、断然「在来工法」です。
ツーバイ系は規格化されている分、融通が利きづらく、現場での微調整なども基本的にできません。
「完全自由設計」で、何でもできるハウスメーカーが良い!!
という人は、在来工法のメーカーから検討してみると良いかと思います。
在来工法(軸組工法)の大手ハウスメーカー
在来工法(軸組工法)を採用している大手ハウスメーカーも、簡単にまとめておきます。
- 住友林業
- 積水ハウス
- 一条工務店
- パナソニックホームズ
- ヘーベルハウス
- ダイワハウス
- トヨタホーム
※大手ハウスメーカーの場合、2×4工法と在来工法で商品が分かれているケースも多い。
各ハウスメーカーの特徴を簡単に紹介していきますね。
住友林業
出典:住友林業
構造 | 木造 |
平均坪単価 | 99.4万円 |
木造住宅のトップメーカー「住友林業」。
木材の良さを存分に味わえるオシャレな内観が特徴で、木の質感が好きな人から絶大な人気を誇るハウスメーカーです。
構法 | 特徴 | 備考 |
BF構法 | 耐震性×大開口 | 大多数がこっち |
マルチバランス構法 | 在来工法ベース | 価格を抑えたい人向け |
住友林業で建てる人の多くは「BF構法」の商品を選択します。
意外と知られていませんが、価格を抑えられる在来工法ベースの「マルチバランス構法」もあります。
出典:sfc.jp
マルチバランス構法の商品は「My Forest GS」という名前です。
住友林業は言わずと知れた“高級ハウスメーカー”ですが、在来工法を選ぶことで手の届く価格で建てられるというのは知っておいて損はないかなと!
積水ハウス
構造 | 鉄骨・木造 |
平均坪単価 | 95.9万円 |
積水ハウスは着工棟数No.1の国内トップメーカーです。
鉄骨・木造どちらもオシャレで、性能も良し。アフターの評判も良く、総合的に見て最も失敗しにくいハウスメーカーです。
構法 | 特徴 |
鉄骨 | 軸組+制震 |
木造 | シャーウッド構法 ※在来工法 |
積水ハウスは鉄骨・木造いずれも在来工法ベースです。
鉄骨「ダイナミックフレームシステム」
出典:積水ハウス
鉄骨住宅では、制震フレーム「シーカス」を搭載することで、シンプルな在来工法を強力に補強。
さらに、大きな梁を2本つけることで、8m×9mの柱のない大空間をつくることも可能です。
木造「シャーウッド構法」
出典:積水ハウス
木造「シャーウッド」も在来工法ベースです。
シンプルな在来工法とはひと味違って、
- 土台ナシで、基礎と柱を直接つなぐことで、柱抜けや倒壊を防ぐ
- 柱と梁の接合部などは強力な金物でガッチリ固定
一見ただの軸組工法に見えますが、その強さはNo.1ハウスメーカーそのもの。
木造軸組にも関わらず、鉄骨同様に8m×8mの柱のない大空間も可能です。
関連記事:【最新】積水ハウスの坪単価と6つの特徴
一条工務店
出典:一条工務店
構造 | 木造 |
平均坪単価 | 79.6万円 |
「家は、性能。」のキャッチコピーでおなじみの一条工務店。
業界最高峰の気密断熱性を誇りながら、比較的リーズナブルな価格で建てられるハウスメーカーです。
構法 | 商品名 |
枠組 (2×4) |
i-smart i-cube i-palette |
軸組 (モノコック) |
グランセゾン セゾン ブリアール 百年 |
一条工務店の商品は、枠組工法と軸組工法の2つに分かれています。
軸組工法は、筋交いのかわりに耐力壁を使った“モノコック構造”になっています。
出典:一条工務店
軸組工法(モノコック構造)の商品は
- 気密断熱性能は枠組工法に劣る
- 全館床暖房がオプション扱い
など、いくつか注意したいポイントもあります。
逆に、軸組工法にしかないメリットも↓
- 坪単価が安くなる傾向にある
- “一条ルール”の縛りがなく、自由に間取りをデザインできる
気密断熱性が劣るといっても、そこは一条クオリティ。他のハウスメーカーや工務店よりも性能は上です。
性能重視の方は要チェックのハウスメーカーです。
パナソニックホームズ
出典:パナソニックホームズ
構造 | 鉄骨 |
平均坪単価 | 86.4万円 |
業界トップクラスの“空気のキレイさ”がウリの「パナソニックホームズ」。
設備もすべてパナソニック製品で統一することができ、ハイテクでスタイリッシュな暮らしが手に入るハウスメーカーです。
構法 | 特徴 | 備考 |
HS構法 (軸組工法) |
耐震性MAX | 坪単価高い |
F構法 (大型パネル構法) |
モノコック構造 | 坪単価安い |
パナソニックホームズで建てる人の大半は、在来工法ベースの「HS構法」で建てます。
予算的に難しい場合は、大型パネル構法(モノコック構造)の商品を提案されるケースが多いです。
出典:パナソニックホームズ
ちなみに、在来工法ベースの「HS構法」は基本的になんでもできます。
対して、大型パネル構法の場合はできないことも多いので注意しましょう。
- 全館空調「エアロハス」がつけられない
- 業界最小15cm単位の設計ができない
- 天井高も最大2m50cmまで など
パナソニックホームズの性能や設計力を活かすなら、セオリー通りに在来工法ベースの商品を選ぶのがおすすめです。
関連記事:【総額どれくらい?】パナソニックホームズの坪単価と特徴まとめ
ヘーベルハウス
出典:ヘーベルハウス
構造 | 鉄骨 |
平均坪単価 | 99.2万円 |
「ヘーベルハウス」は躯体最強のハウスメーカーとして、業界人からも知られています。
屋上利用や庭付き2階リビングなど、都心部でも家の中にいながら外を感じられるプランが人気です。
工法 | 特徴 | 商品名 |
ハイパワード制震構造 ※軸組 |
軸組+制震 | CUBIC 新大地 |
システムラーメン構造 ※ラーメン構造 |
重量鉄骨系 | FREX3など |
3階建てや重量鉄骨を使用する場合を除き、ヘーベルハウスは基本的に軸組工法で建てます。
出典:hebelian.com
同じ軸組工法でも、ヘーベルハウスと他社ではその強さは全く違います。
ヘーベルハウスの場合は
- 全邸制震フレームが標準搭載
- 全邸標準仕様で「耐震等級3」
です。
軸組工法といっても、正直そのへんの2×4工法よりも全然強い。
耐震性や耐久性を重視したい人は、必ず検討したいハウスメーカーです。
ダイワハウス(大和ハウス)
出典:ダイワハウス
構造 | 鉄骨・木造 |
平均坪単価 | 95.0万円 |
商業施設や集合住宅なども幅広く手がける「ダイワハウス」。
標準仕様で天井高2m72cmの「天井が高い家」や、停電時でも1週間は普通に暮らせる「3電池連携システム」がウリのハウスメーカーです。
工法 | 構造 |
軸組工法 | 平屋・2階建て |
ラーメン構造 | 3階建て~ |
ダイワハウスの平屋・2階建てはいずれも軸組工法です。
柱の太さや制震装置の種類で、いくつかの商品に分かれていますが、ベースはどれも同じです。
トヨタホーム
出典:トヨタホーム
構造 | 鉄骨・木造 |
平均坪単価 | 76.5万円 |
トヨタ自動車のおひざ元・愛知県では、大きなシェアを占めるトヨタホーム。
トヨタ自動車の技術を生かした工場生産で、高品質な注文住宅を建てることができます。
※トヨタ関連企業の割引もアリ
工法 | 商品名 |
ユニット工法 | シンセシリーズ |
軸組工法 | エスパシオシリーズ |
主力商品はユニット工法の「シンセ」です。標準仕様で「耐震等級3」も楽々クリアしています。
出典:トヨタホーム
対して、在来工法の「エスパシオ」は間取りの自由度が高く、ユニット工法ではできない曲線のある外壁なども作ることができます。
※割合的にはユニット工法の「シンセ」が受注の大半を占めるそうですが…。
まとめ
というわけで、今回は注文住宅の在来工法について紹介しました。
最後にもう一度、在来工法のメリットデメリットをまとめておきますね。
メリット | デメリット |
間取りの自由度が高い | 品質にバラつきが出る |
大きな窓をつくれる | 施工期間がやや長い |
建築コストが安い | 耐震性は劣る |
カビや結露がつきにくい |
在来工法と2×4工法は、どちらを選んでも決して間違いではありません。
ただ、具体的な間取りイメージや理想の間取りがある人は、在来工法のほうが向いていると思いますよ。
気になるハウスメーカーのカタログは揃えましたか?
カタログはいわば教科書のようなもの。カタログを広げて、夫婦で話し合うのも住まいづくりの大切な時間です。
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